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【感想・レビュー】「嫌いなら呼ぶなよ」綿矢りさのブラックユーモア炸裂!


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綿矢りさと聞いて1番最初に浮かぶ小説は

史上最年少で芥川賞を受賞した「蹴りたい背中」でしょうか。

 

 

 

綿矢りささんは2004年に「蹴りたい背中」で一躍有名になった後も、

20年近くずっと、夢中で読んでしまう作品をいくつも出してきました。

 

 

今回は綿矢りささんの作品が好きで、

ほとんど全て読んでいる私が、2022年発売の「嫌いなら呼ぶなよ」をご紹介します!

 

 

綿矢りさファン目線で、面白さを伝えられたら嬉しいです。

 

 

 

 

 

 

綿矢りさ作品が好きな理由

私は読書が好きですが、小説を幅広く読んでいるわけではありません。

 

 

読むのは特定の作家の小説か、話題作のどちらかです。

 

 

「嫌いなら呼ぶなよ」の紹介に入る前に、

少しだけ綿矢りささんの魅力を語らせてください。

 

 

  • するすると飲み込めるような日本語の流れで、読むのをやめられない
  • 体温や彩度、力加減まで伝わってくるほど繊細な描写
  • 文字しか読んでいないのに、脳裏に情景がくっきり浮かぶ

 

 

綿矢りささんの作品は、こんなところがすごいです。

 

 

ゆっくり楽しもうと思っていた本なのに、

読むのが止められなくて、睡眠時間を削って読了したことも度々です。

 

 

 

「嫌いなら呼ぶなよ」概要

 

嫌いなら呼ぶなよ (綿矢りさ/河出書房新社)

 

 

 

「嫌いなら呼ぶなよ」は、短編小説が4作品収録されています。

 

 

それぞれの話は独立した内容ですが、

共通点を挙げるとすれば、

4人の主人公が抱える、タイプの違う闇深さでしょうか。

 

 

 

明らかに性格が悪いとか、あり得ないほど意地悪とか、

そういう登場人物はそういう特徴があることで、

ストーリーを盛り上げてくれますよね。

 

 

 

でも、「嫌いなら呼ぶなよ」の主人公たちはそこまで極端ではなくて、

 

 

何なら自分の身近(もしかしたら自分自身?!)にいそうな

人間味と闇深さが共存しているところが怖いんです。

 

 

美容整形、SNSへの誹謗中傷、不倫、不毛なメールのラリー...

 

 

現代的なテーマを、コロナ禍のリアルな心情まで組み入れながら

勢いある作品にしています。

 

 

 

綿矢りささんは恋愛小説が多く、

それもとっても素敵です。

 

 

でも実はブラックな短編を書いても、

流れるような日本語の美しさはそのままに、

人をぞくっとさせるセンスに溢れているのです。

 

 

 

綿矢りさファンの予想では

「嫌いなら呼ぶなよ」にはまる人は、「憤死」も好きだと思います!

 

 

 

 

 

眼帯のミニーマウス

美容整形を繰り返してしまう主人公の逃げ場の無さと、

整形について無遠慮に切り込んでくる周囲の意地悪さが混ざり合います。

 

 

確かに整形ってひと昔前だと、うすうす気づいていても、

そっとしておくのが良しとされてたと思います。

 

 

今は整形を公言するインフルエンサーの影響もあって、

以前より話題に出しやすくなってるのかもしれませんね。

 

 

 

ちなみに本作品の登場人物は、「オーラの発表会」とつながっています。

 

 

 

 

眼は口ほどに物を言わなかった、眼は清潔で可憐だ。怒ってもちょっと色が変わるぐらいで害はない、攻撃してくるのはいつも醜い口だ。(P.29)

 

 

コロナ禍で初対面の相手の顏の下半分が、

ずっと分からなかった頃が思い出されます。

 

 

神田夕

一見おっとり癒し系主人公が、

実はYoutuberに粘着して誹謗中傷コメントを書きまくっている...

 

 

楽しい感想ならまだしも、

誹謗中傷を書き殴っているのは一体どんな人なのかと不思議です。

 

 

まだ視聴者の少ないチャンネルの固定視聴者になり、激励したり批判したり、温と冷の私のコメントに翻弄されている主の動揺が見て取れると、支配欲さえ満たされる。(P.79)

 

 

必死にコメントを残す側の、必死さと痛々しさが伝わってきます。

まさにアンチとファンは紙一重を感じさせます。

 

 

嫌いなら呼ぶなよ

3組の夫婦が楽しく集まる会かと思いきや...

 

 

主人公のナルシスト加減がかなり痛くて、

務めて冷静に対応しようとするほど薄っぺらくなってしまう。

 

 

整形なんてチートとは言えないよな、遺伝こそチートだ。(P.158)

 

 

不倫はよくないことなのに、

今この時もきっとあちこちで起こっている。

 

 

その中には、この主人公みたいな人がきっといるはず。

 

 

老は害で若も輩

まずタイトルからしてセンス炸裂です。

 

老害なんて言葉があるけど、

確かに若輩は輩(やから)ですね。

 

 

なんと作中に「綿矢りさ」が登場します。

 

 

論より証拠というやつですか、それで私をやっつけた気になってるのなら、片腹どころか両腹痛いです。笑ろてまいます。(P.178)

 

 

こういうさらっと流れる2文だけでも面白い。

 

 

芸術家の癖の強さに振り回されて、

繊細ぶって周りを巻き込む人に疲れて...

 

 

最後はついに、ぶちっと何かが切れてしまう。

後味いいような悪いような。

 

 

まとめ

綿矢りさ「嫌いなら呼ぶなよ」をご紹介しました。

 

人間が持つ闇深さ、面白おかしいのに同時にぞっとする展開。

 

短編なので、気軽に読み始めることができますよ。

 

 

 

「嫌いなら呼ぶなよ」はKindle版でも読むことができます。

 

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綿矢りささんのエッセイも面白いです。

 

knonononai.hatenablog.com