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【感想・レビュー】「離婚の文化人類学」 離婚の理由、知りたくない?


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上昇する初婚年齢、未婚率、そして離婚件数...

 

結婚することも子供を持つことも当然ではなく、

むしろ選択の1つと見なされつつある昨今。

 

 

 

それでも結婚する時は幸せな家庭を夢見るし、

離婚は避けたいと考えますよね。

 

 

今回は、現代日本において離婚した/しようとしている男女に対し、

丁寧な聞き取り調査でその背景を探った

「離婚の文化人類学を紹介します。

 

 

 

未婚/既婚、離婚経験の有無にかかわらず、

他人の離婚話というものは、

聞きにくいトピックであるぶん

その理由が気になる方も多いのではないでしょうか。

 

 

私もそのうちの一人で、とても興味深く読んでしまいました。

 

 

 

「離婚の文化人類学」の概要

 

離婚の文化人類学現代日本における<親密な>別れ方 (アリソン・アレクシ―/みすず書房)
 

 

 

「離婚の文化人類」は、

個人や家族の変容を捉える契機として、離婚を検証します。

 

 

  • 既に離婚した/された人
  • これから離婚しようとしている人
  • またはその可能性がある配偶者を持つ人

こういった男女への聞き取り調査で、現代日本の離婚に至る背景を探っています。

 

 

 

それだけでなく

  • ドラマや映画で扱われるサラリーマン像
  • 家族観、夫婦関係について雑誌で取り上げられるテーマ

など、時代に沿ったメディアの変遷も分かります。

 

 

  • 婚姻や離婚に関する日本の法律
  • 厚生年金の法改正
  • サラリーマンへの福利厚生
  • 戸籍上にバツがつくこと

といったような、規則から見えてくる社会規範についても言及されます。

 

 

 

離婚に至るには個々の夫婦ごとに生じる問題だけでなく、

時代背景や社会規範といった要素も

複雑に絡んでくるのです。

 

 

一般的な離婚理由として挙げられるのは

  • 性格の不一致
  • 配偶者からの暴力
  • アルコール等への依存
  • 深刻な借金

です。

 

 

しかし、著者が聞き取り調査をするところによれば、

「離婚を避ける有効な二つのヒント」は次の通り。

 

 

  • 夫婦は互いを「お母さん」「お父さん」と呼んだりしないこと
  • 態度ではなく言葉で自分の気持ちを示すこと

=配偶者は互いに「愛している」とはっきり言葉で伝えること

 

 

 

離婚後には「きれいさっぱり縁を切る」という表現がある一方、

意外にも離婚後に交流が続くような、

<親密>な別れ方の例も言及されています。

 

 

感想

私は最近入籍した20代後半女性です。

 

 

それでも、日常生活ではなかなか人から聞く機会がなく、

興味が湧いた本です。

 

 

著者だからこそ聞きだせたこと

馴初めや新婚生活の話は「ハッピー」な出来事として、

他人に聞くことは失礼には当たらないはず。

 

 

一方で離婚は、一般的に「残念」な出来事のイメージがあり、

詳細を聞きたい欲望に駆られたとしても、

そのような無礼を働くべきではないです。

 

 

 

そんな「離婚」について詳しく聞きだせたのは、

自分の見た目が、明らかに日本人的容姿ではないからだと著者は言います。

 

 

白人アメリカ人である著者は、

日本的規範の外にいるように見えるからこそ、

調査協力者たちは本音を打ち明けることができたようです。

 

 

 

人の不幸(離婚)は密の味というよりも、

離婚率が上昇する現代においては誰にでも起こりうるという点で、

「明日は我が身」という

ある種の緊張感からの興味深さがあります。

 

 

 

離婚パターンと女性の経済状況

かつては夫が妻に切り出す離婚パターンが多かったです。

 

 

しかし、近年では「熟年離婚」という言葉もあるように、

長年連れ添った妻が(夫から見れば晴天の霹靂のように)

夫に対して離婚を要請するパターンが増えていると言います。

 

 

この変化は興味深いと同時に、

すがすがしく離婚できた女性が、

後々経済的に困窮する場合が多いことは

頭に入れておきたいです。

 

 

別れたその時は正しい判断をしたようでも、

十年経ってみて、自分が置かれた経済状況に

驚くことがないとはいえないのです。

 

 

新自由主義と離婚

新自由主義」が家族関係に与えた影響についての考察は、

婚姻というトピックだけでなく、

経済というテーマからも意義深いと思います。

 

 

専業主婦は非生産的と見なされ、

労働市場に介入させようという動きは、理解できなくもない。

 

 

でも、その主婦たちが、昼夜働き続けるサラリーマンの

就業モデルを支えていたのです。

 

 

だから女性が稼げるようになるにつれ、

相互依存的な関係は薄れるどころか、

現代では避けるべき関係性とまで感覚が変わっているようです。

 

 

「自己責任」論が付随する新自由主義でも、

経済面の避けがたい問題は

家族での解決が望まれるという矛盾。

 

 

誰に何をどこまで頼れるのか、頼れる先は自分だけなのか、

家族、はたまた社会システムなのか。

 

 

現代日本におけるサバイバルを考える1冊となりました。

 

 

まとめ

現代日本において離婚した/しようとしている男女の背景を探った、

「離婚の文化人類学」をご紹介しました。

 

 

アメリカ人の著者だからこそ、

聞きだせた内容が沢山あったと思います。

 

 

パートナーがいる方は、

2人の関係性を見直すヒントにもなるのではないでしょうか。

 

 

率直なインタビュー箇所だけでも、

共感したり気づきがあったりして引き込まれると思います。

 

 

 

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