第167回芥川賞受賞作の
「おいしいごはんが食べられますように」。
仕事、食事、恋愛要素が上手く掛け合わされ、
職場の人間関係や日々の食事に悩む人には
共感できるポイントが多々あるのではないでしょうか。
今回は「おいしいごはんが食べられますように」の
魅力をご紹介します!
「おいしいごはんが食べられますように」概要
おいしいごはんが食べられますように (高瀬隼子/講談社)
第167回芥川賞受賞作で、
- 仕事でのパワーバランスや配慮
- 日々の食事に対する個々人のスタンス
- 職場内恋愛の空気感
といった要素がバランスよく織り交ぜられています。
全150ページほどでサクサクと話が進むので、
読書習慣のある方なら、
半日もかからず読めるかもしれません。
タイトルからは、
食事をテーマにした小説が予想できます。
表紙も温かな黄色と柔らかな白で、
食べることにまつわるほのぼのとした物語かと思っていました。
しかし実際は、
- 行き過ぎた配慮のせいで、シワ寄せをくらう立場のいらだち
- 厚意ならありがたく受け取らなければいけないのか、と言う疑問
- 弱さを振りかざせることの強さ
- 食生活のルーティンに、介入されることの居心地の悪さ
- 先輩であっても、尊敬できない人カテゴリーに移動させるきっかけ
といった、どす黒いとまではいかなくても、
だいぶ灰色がかった人間のもやもやが目に浮かぶようです。
「おいしいごはんが食べられますように」感想
特に気になった個所を挙げてみます。
弱いことを周知させる強さ
登場人物の芦川さんは、
か弱くて「いい子ちゃん」な女性として描かれます。
いい子過ぎて、だんだんと怖くなってくるのですが。
- ハラスメントを受けた経験から、高圧的な人が怖いこと
- 頭痛持ちであること
- 残業が続くと体調を崩すこと
このような特性から、
管理職の男性やパートの女性たちに
様々な場面で配慮を受けます。
あなたはどんなに小さな声で話しても、周りがその声を拾ってくれるところにいるんですね。(P. 23)
新たに赴任してきた二谷が、
芦川さんに抱いた感情が腑に落ちます。
「彼女は弱いのだから、配慮しなければならない」
という共通認識が出来上がっている職場。
そこで守られることの、ある意味の強さが見えます。
それゆえに、シワ寄せを食らう人が出てきます...。
管理職の苦悩
あらゆることがハラスメントになり得る時代。
部下とのコミュニケーションの取り方に
悩む上司も増えているのではないでしょうか。
ちょっとでも体調が悪いと主張されたら、
「休んでいいから」と言わざるをえない。
まさか「無理してでも働け」なんて言えない。
でも、欠員が出た分はどうにか補填しなければならない。
誰でもみんな自分の働き方が正しいと思ってるんだよね (P. 42)
これは思い当たる節があります。
遅くまでバリバリ働く人、
定時退社を目指す人、
休日出勤も厭わない人、
有休消化率の良い人...
それぞれが自分は正しいと思っている中、
調整を迫られる管理職は、かなり難しい立場と推察します。
食生活ルーティンを乱してまで、厚意は受け取るべき?
甘いお菓子が好きな人もいれば、苦手な人もいます。
沢山食べられる人もいれば、少しの量で満足という人も。
私はお菓子全般好きですが、
そんなに頻繁に食べたいわけではなく。
特別疲れているときとか、
何か頑張ったご褒美的な位置づけです。
また、美味しいものは好きだし、
人と食事することも嫌ではないのですが
「もっと食べなよ」という厚意?は困ることもあります。
美味しいものを美味しいと
最も感じるのは最初の一口で、
満腹になるほどその感覚は鈍っていきますよね。
単純に、沢山食べるのは
得意ではないということもあります。
食べることは生活にひどく深く密着しているから、
それぞれにルーティンがあって。
それが乱されるのは、
睡眠を妨害される苦痛なんかに近いのかもしれません。
ちゃんとしたごはんを食べるのは自分を大切にすることだって、カップ麺や出来合いの惣菜しか食べないのは自分を虐待するようなことだって言われても、働いて、残業して、二十二時の閉店間際のスーパーに寄って、それから飯を作って食べることが、ほんとうに自分を大切にするってことか。(P. 123)
健康的な食生活は望ましいかもしれないけれど、
そもそも体を維持するだけならば
そんなにこだわる必要はないのでしょうね。
まとめ
芥川賞受賞作「おいしいごはんが食べられますように」を
ご紹介しました!
会社員の方なら、
職場でのリアルな風景を思い浮かべながら
するすると読めるかもしれません。
ぜひ手に取ってみてくださいね!
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※食欲も個人差がありますが、「性欲」はなおさらですよね。
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