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【感想・レビュー】「海をあげる」柔らかな日常の中に滲み出る、沖縄ゆえの憤り


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沖縄が今、直面している状況、それに対する憤り、女性たちに降りかかる困難を

丁寧なインタビューから描き出すエッセイです。

 

  • Yahoo! ニュース本屋大賞2021 ノンフィクション本大賞
  • 第7回沖縄書店大賞 沖縄部門大賞
  • 第14回 [池田晶子] 記念 わたくし、つまりNobody賞

 

と、数々の賞を受賞しています。

 

 

沖縄の基地問題に関心がある方も、観光地としての沖縄が好きな方も

一度読んでほしい本です。

 

著者は沖縄生まれ、琉球大学教育学研究科教授の上間陽子さんです。

 

上間さんは普天間基地の近くに住み、沖縄で子育てをしつつ、

生きづらさを抱えた女性の声に耳を傾けてきました。

 

 

そんな彼女だからこそ記すことができた内容で、1人の娘を持つ母親目線から、

今の沖縄を考えることができます。

 

 

 

海をあげる (上間 陽子/筑摩書房)

 

 
 
著者である上間さんは、東京と沖縄で、
未成年の少女たちの支援・調査に携わってきた方です。
 
 
本作の後ろの方には、上間さんが行ったインタビューの調査記録が載っていて、
主に2017~2019年に行われたことが分かります。
 
 
本作は「webちくま」に連載された内容に書きおろしを加えて、
書籍化したものです。
 
 
感想

知人の勧めで、読んでみました。

 

 

何となく沖縄を題材にした作品だ、ということしか知らず、

気合を入れて読まなければならない、重厚な内容かと思っていました。

 

 

実際に開いてみると12編からなる構成で、1編ずつは長くなく、

胸が痛くなる事実がありながらも、形式としてはサラサラと読めます。

 
 
日本地図を見ると、沖縄が想像よりも本州から距離があることに気が付きます。
 
 
私自身、中学校の修学旅行で沖縄を訪れたのが最後で、
「沖縄の今」は新聞やニュースで何となく見るものになっていました。
 
 
そんな私に直接訴えかけるような、切実さが感じられます。
 

 

簡単ではなく重たいテーマを扱う反面、暖かみ感じる部分が多いのは、
娘である風花さんの伸びやかな成長と無邪気さが見えるからです。
 
 
 
しっかりとご飯を食べられることは、
それだけで生命力を感じる尊いことなのだと思います。
 
 
特に印象深いのは、生きづらさを感じる女性たちの声を掬い上げていることです。
 
 
こうした内容は、年単位の時間をかけた信頼関係がなければ、
聞くことができないでしょう。
 
 
あらゆることが「自己責任」で片づけられがちな昨今、
生きづらい状況に陥ってしまった若者たちの個別な背景を見過ごさず、
読み解いていく根気強さと寄り添う姿勢に、敬意を表したいです。
 
 

合わせて読みたい

「海をあげる」に共感する方は、「持続可能な魂の利用」もお勧めします!

 

「海をあげる」はノンフィクションのエッセイですが、

「持続可能な魂の利用」は既視感がすごいのに、

「おじさんから少女が見えなくなる」という面白い設定で、引き込まれる小説です。

 

 

持続可能な魂の利用 (松田 青子/中央公論新社)

 

 

 

knonononai.hatenablog.com

 

 

まとめ

沖縄の課題を扱ったエッセイ、「海をあげる」をご紹介しました。

 

なかなか根深いテーマですが、文章自体は読みやすく、

暖かみの中に鋭い問いかけが表れます。

 

気になった方は、手に取ってみてくださいね。

 

 

「海をあげる」はKindle版でも読むことができます。

 

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