真っ赤な表紙に、白字ではっきりと書かれたタイトル「誰もが『人と違うこと』ができる時代」はかなり印象的です。
「ニューヨーク・タイムズ」紙でビジネス書の売上第1位、アマゾンUSでも第1位(企業文化)を獲得した本書。アメリカのビジネスパーソンに広く読まれたことでしょう。日本語訳は2016年に発売されています。
平凡な一会社員の私は、「人と違うこと」ができるのは、リスクを冒してでも挑戦できる特別な人だと思っていました。
でも、実は成功している起業家ほど普通の人びと同様、あるいはそれ以上にリスクを回避したがる傾向があるようです。
- 起業して成功した人たちの共通点
- 周囲を自分の味方につける方法
- どういう人と組むと、よりよい組織ができるのか
- 緊張した時ほど、よいパフォーマンスをできる考え方
を知りたい方は、ぜひ「ORIGINALS」を手に取ってみてください。オリジナルなアイディアを実現できるヒントを、たくさん見つけられるはずです。
著者が組織心理学者であることもあり、
- 会社の重役をされている方
- 起業して、これから自分で組織を作っていきたい方
- 大勢をまとめる仕事をしている方
に特にお勧めの内容です。
ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代 (アダム・グラント/三笠書房)
概要
ORIGINALSは、ペンシルベニア大学ウォートン校教授で、組織心理学者のアダム・グラントによる本です。
歴史上の偉人(アインシュタイン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、キング牧師…)から、現代の大企業(グーグル、アップル…)まで、様々な研究を参照しながら、オリジナルな成果が出やすい条件を教えてくれます。
8部構成の本です。
PART1 変化を生み出す「創造的破壊」 「最初の一歩」をどう考えるか
PART2 大胆に発想し、緻密に進める キラリとひかるアイデアとは
PART3 ”無関心”を”情熱”へ変える方法 まわりを巻き込むタフな説得力
PART4 賢者は時を待ち、愚者は先を急ぐ チャンスを最大化するタイミング
PART5 「誰と組むか」が勝敗を決める パワフルな結束をつくる人の見分け方
PART6 「はみ出す人」こそ時代をつくる どこに可能性が隠されているか
PART7 ダメになる組織、飛躍する組織 風通しよく、進化を遂げるしくみづくり
PART8 どんな「荒波」も、しなやかに乗りこなせ あらゆるものをエネルギーにする方法
読んでみた中で、特に印象的だった箇所をご紹介します。
本当のリスクは何なのか (PART1 P.44)
ある分野において安心感があると、別の分野でオリジナリティを発揮する自由が生まれるというメリット
ここで言う「ある分野」とは、本業のように、収入や社会的地位がある程度安定しているものです。「別の分野」とは、趣味で書いている小説や副業で始めたビジネスのように、上手くいくかどうか分からないものです。
起業というと、全ての情熱、時間とコストをかけて、やっと成功するものというイメージがありました。
ですが実際は、本業の安定した収入や社会的地位があってこそ、安心して趣味や副業に取り組めます。自分の生活がある程度は保障されているという安心感があってこそ、オリジナルな発想が生まれてくるようです。
いいアイデアは”放置”から育つ (PART4 P.158)
先延ばしは「生産性の敵」かもしれないが、「創造性の源」にはなる。
私たちは「効率重視」の労働市場で、必要なことであれば手早く処理することが望まれます。
仕事をいつまでも溜め込んでいるのは、よくないことだとみなされるでしょう。締め切りよりも早くその仕事を終えられるように、早くから取り掛かることは、一見正しいやり方に思えます。
しかし、オリジナリティ溢れる新しいビジネスのアイデアは、「先延ばし」した結果得られることがあるそうです。
人は、一度取り掛かって進めてきた仕事を、最初からやり直す気にはなりません。だから、期限ぎりぎりまであえて取り掛からず、その分アイデアを蓄えておきます。
蓄えるだけ蓄えて、形にすることを先延ばしにしていたアイデアを、締め切り直前で一気に完成させます。すると、寝かせていたアイデアが機を熟した形で表れ、類を見ないなものになる。
その顕著な例が、"I have a dream."で有名なキング牧師の演説や、レオナルド・ダ・ヴィンチの”モナ・リザ”なのです。
「ソフトな過激派」がうまくいく (PART5 P.199)
オリジナルな人が成功するには、「節度のある過激派」になることが必要
ある大学生は、非常に画期的な変換器のアイデアを思いつきました。
それが今までにないオリジナルな発想だったので、数十人の専門家に声をかけても、実際につくってみようと協力してくれる人がいませんでした。
その大学生の本来の目的は「無線で電気を生み出すしくみをつくりたい」というものでしたが、それだと壮大すぎて、賛同してもらえなかったのです。
そこでその大学生は、本来の目的を説明することをやめて、自分に必要な個別の技術の詳細(このようなパラメータをもつ変換器の設計)だけを話すようにしました。
すると、本来の目的を話していた時には得られなかった協力者を、見つけることに成功したそうです。
今までにないオリジナルなものを生み出すことは、最初は特に理解者を得にくいものです。なので、既存の技術やビジネスに慣れ親しんだ人には、アイデアの過激さを控えて伝えることで、味方を増やせる場合があります。
感想
アメリカの大学院教授ということもあり、アメリカの企業の例が多かったです。
特に、アメリカの起業家たちが、どのような経緯や経歴で起業したかという内容は面白いと思いました。日本よりも起業文化が根付いているアメリカ人は、意気揚々とを起業を進めているものと思っていたからです。
実際は、興した事業に専念する直前まで、学生をしていたり他の会社で働いたりしていたというのは、私が勝手に抱いていたイメージとギャップがありました。
他にも、大事なことをあえて先延ばしにしたり、オリジナルすぎる発想はあえて節度を持って伝えたりするなど、意外な発見がありました。
私は、心理学や社会学はあまり詳しくありません。
しかし本書は、多くの歴史的なエピソードを踏まえながら、研究結果を紹介してくれるので、イメージが湧きやすいと思います。
まとめ
歴史を遡りつつ、現代に至るまでの様々なオリジナルの成果が出たエピソードを踏まえ、その環境、状況、オリジナルな人たちの特徴をこの本1冊で学ぶことができます。
その時代によっては少数派だったオリジナルな人たちが、行動を起こしてくれたお陰で、よりよくなった社会に私たちは生活できているんですよね。婦人参政権であったり、革新的な技術であったり…。
オリジナルな先人たちに感謝しつつ、自分の仕事や今後の生活に活かしていきたい本です。
「ORIGINALS」はKindle版でも読むことができます。
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