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【ネパール】「友達だから安くするよ」と言ってくる宝石商人の話


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ネパールと言えば有名なのはエベレストでしょうか。ネパールはインドと中国の間に位置し、エベレストがあることから登山者に人気がある国です。

 

今回はそんなエベレストの首都、カトマンズの観光市場で「君は友達だから、特別にいい宝石を売るよ」と言ってくる宝石商人を研究した本を紹介します。

 

また、ネパールで今なお続くカーストの1つ、カドギを追った本もあります。

 

エベレストだけでは語り切れない、ネパール社会の一部を覗いてみましょう。

 

 

友情と詐欺の人類学―ネパールの観光市場タメル宝飾商人の民族誌 (渡部 瑞希/晃洋書房)

 
ネパールの首都、カトマンズのタメル地区には、宝石を売る商人たちが集まっています。宝石商人たちは、カトマンズを訪れる観光客に「君は友達だから、いい宝石を特別に安く売るよ」と言って、宝石を勧めてきます。
 
宝石商人たちがどんな内容を観光客から聞きだし、宝石を勧めるのか、豊富な事例が集められています。
 
そもそもここで言う「友達」って、その言葉を利用して宝石を買わせたいだけなのでは…?「友達」って言っても会ったばかりだし、という観光客側の疑問の声が聞こえてきそうです。
 
「友達」はどんな世界にも該当する単語があり、親しい間柄の人をそう呼びます。でも、市場で観光客を相手に使う時には、ちょっと違った意味合いになりそうですよね。
 
観光市場で使われる「友達」という言葉から、「本当の友達とは?」という疑問を学術的に深堀しています。
 
筆者が実際に見聞きした事例が沢山あるので、ネパールに旅行に行く前に読んでみてはいかがでしょうか。
 

ネパールでカーストを生きぬく―供養と肉売りを担う人びとの民族誌 (中川 加奈子/世界思想社)

 
ネパールで低カーストと言われてきた人々、カドギを取り上げます。
 
カドギが民主化や市場化をいかに生き抜いてきたのか、自分たちのカースト範疇をどのように定義してきたのか、長期的な観察から丁寧に書き上げられています。第44回渋澤賞、第6回日本南アジア学会賞を受賞した本です。
 
この本では、カドギの中でも特に食肉市場の拡大という背景に着目しています。カドギは屠畜に従事しているからです。カドギたちはグローバル化に伴う肉の流通の変化に対応するべく、市場経済での個人的な利益追求と、地域に基づくカーストの役割を同時にしています。そうすることで、自分のカースト範疇をとらえ直しています。
 
カドギにとってカーストとは、社会の変化に適応し自らの生を肯定的に捉える拠点として機能しているのです。カドギたちは社会、労働、経済といった様々な局面で、自分のカーストを最大限戦略的に利用し、常に再創造しています。
 
カドギの生き方から「レッテルから逃れられなくても、レッテルを拠点に自分の生き方を肯定的に捉える方法を見出す」ことも可能なのでは?と筆者は投げかけています。
 

まとめ

ネパールの観光市場で宝石を売る商人と、商人の言う「友達だから安くするよ」というときの「友達」を研究した本、今なお続くカーストで肉を売る人々を追った本を紹介しました。
 
海外旅行ができない今、本からネパールのことを知るのも、非日常的な試みではないでしょうか。
 
※タイのゴーゴーバーについても研究があります。