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イスラーム金融とイスラーム銀行 分かりやすい本紹介


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ことの発端は、資本主義経済について書かれた、中学生向けの分かりやすい本を読んだことでした。

 

 

 

 

この本を読んだのは、自分だって労働力を提供し、賃金を得て資本主義経済に参加しているのに、その仕組みをあまり分かっていないと感じていたからです。

 

 

その中で紹介されていた「イスラーム銀行」の説明が面白く、関連した本を最近2冊読みました。「イスラーム銀行」はお金を貸しつける相手から、利子をとることができません。では、どうやって存続しているのか、読んだ内容のまとめもかねてご紹介します。

 

 

※資本主義経済について読んだ本をまとめた記事はこちらです。

knonononai.hatenablog.com

 

 

※仕事が辛い理由は、社会のシステムにあるのでは?と考えた本3冊。

knonononai.hatenablog.com

 

 

 

イスラームを知る12 イスラーム銀行 金融と国際経済 (小杉 奏, 長岡 慎介/山川出版社)

 
 
概要
タイトルの通り、イスラーム銀行の仕組みについて説明した本です。
 
そもそも、なぜイスラームで利子を取ることが禁止かというと、イスラームの原則が「等価交換」だからです。「100円貸したら100円が返ってくる」ことが決まりで、「100円を1年貸したから、10円を利子として110円を受け取る」ことはできません。
 
 
しかし、資金提供をして事業者と協業することはできます。事業が成功したら、その利益をどのように配分するかをあらかじめ決めておきます。
 
この方法は、イスラーム銀行が採用している方法の1つです。お金を事業者に貸し、返してもらう時には、利子ではなく事業者が成功した利益を配分してもらいます。このようにしてイスラーム銀行は存続しています。
 
 
ただ、この方法でもし事業が失敗しても、その損失もまた資金提供者と事業者で分け合います。資金提供者はお金を貸しているわけではないので、事業が失敗したら、提供したお金は戻ってこないのです。
 
これは、イスラーム銀行の預金者にとってもリスクとなります。だから、イスラーム銀行の預金者は、自分がお金を預けている銀行がどのような事業に資金を提供しているのか、アンテナを張っておく必要があります。この点は、日本と大きく異なりますね。
 
 
感想
リバー、スクーク、ムダーラバなど、専門用語が沢山出てきます。専門的に学ぶわけではなく、興味本位で読むなら、専門用語を暗記する必要はないと思います。
 
「そんな仕組みがあるんだ」という発見や、「資本主義とは違ったシステムでも、こんな風に経済が回っているんだ」という驚きがあれば、それだけでも読んだかいがあります。
 
 
イスラーム」と言うと、私たちからは縁遠い宗教に思えますが、その人口は年々増加しています。現在はキリスト教の人口が世界で最も多いですが、2100年にはイスラム教が最大勢力になるだろう、という調査もあるそうです。
 
イスラーム人口が勢力を増していく中、資本主義経済の仕組みしか知らないと、必ずどこかで衝突が生じると思います。
 
 
そうなった時に、私たちが慣れ親しんだやり方以外の方法を、模索する必要が出てくるのではないでしょうか。今読んでおくと、もしかしたら数十年後、もしくはもっと近い将来、役立つかもしれません。
 
 
 

イスラーム金融ー贈与と交換、その共存のシステムを解く (櫻井 秀子/新評論)

 

概要

こちらはイスラーム銀行も含んだ、より広い範囲のイスラーム金融についての本です。

 

具体的には、サブタイトルにあるように、イスラーム圏で贈与と交換がどのように共存んしているのかを説明しています。

 

 

  • 贈与とは、長期的な相互関係を想定し、無償で何かを提供することです。
  • 交換とは、物品とその代金のように、即座に対応するものをやりとりすることです。

 

 

資本主義経済では、圧倒的に交換の割合が高いです。お金を払えば商品がすぐ手に入るのは確かに便利で、これからも続いていくだろう仕組みですが、それが現代の孤独感・閉塞感にも影響します。

 

 

では、イスラーム圏で見られる贈与は、どのような形で現れているのでしょうか。

 

その最たる例が「喜捨」です。喜捨とは貧しい人、旅人、生活が困難な人に対する寄付のようなものです。富裕層だけでなく、庶民も時には貧しい人であっても喜捨を行うほど、イスラーム圏では生活に根付いている習慣です。

 

喜捨は神からの贈り物という考えがあるため、喜捨を受けた人は、喜捨をした人に対してではなく、神に感謝するそうです。

 

 

喜捨をした人も「自分が貧しい人を助ける」という動機ではなく、「来世のために正しい行いをする」という理由らしいです。

 

この辺りの感覚が、多くの日本人とは異なるのではないかと思いました。

 

 

感想

先に述べたように、喜捨の説明は自分の生活からは離れているもので、面白く感じました。もし自分が喜捨をした相手が、自分ではなく神にだけ感謝していたら、私だったら「あれ?私には?」と思ってしまいそうです。

 

他にも、バザールでの価格交渉の話も興味深かったです。バザールの商人は、同じ商品であっても富裕者には高めに、貧しい人には安く売ることがあるそうです。日本のスーパーマーケットやコンビニでは、ありえない対応ですよね。

 

 

バザールの商人が価格を調整することで、その地域の生活の均衡を保全する役割を果たしています。

 

 

まとめ

イスラーム銀行とイスラーム金融について書かれた本を2冊紹介しました。

 

2冊に共通したメッセージとしては

 

  • イスラームの人口はこれからも増えていく
  • 増えいてく層のことを何も知らないままでよいのか
  • 日本人は何となく「イスラーム」に苦手意識があるけれど、将来に向けて少しずつでも理解を深める必要がある

 

ということだと思います。

 

 

イスラームに限らず、世界は広く、多様な生活様式や文化にあふれています。そんなことを改めて感じました。

 

海外旅行が難しい今こそ、異文化を本から学ぶこともまた、貴重な経験になると思います。

 

 

※愛用しているオススメのしおり

knonononai.hatenablog.com

 

 

 

※タイについての本まとめ。

knonononai.hatenablog.com

 

 

※ネパールについての本まとめ。

knonononai.hatenablog.com