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「ぼくイエ」「聖なるズー」多様性を話題の本から考える


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「多様性」という言葉は、今やあちこちで聞く言葉です。「性の多様性」「ライフスタイルの多様性」「多様性を大切にしよう」など。今回は話題となった2冊、「ぼくイエ」と「聖なるズー」から多様性について考えてみます。

 

 

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー (ブレイディ みかこ/新潮文庫)

黄色に水色の帯、キャップを被った少年が表紙の本書。書店の目立つ位置に置かれているのを、目にした方も多いのではないでしょうか。本書は「Yahoo!ニュース|本屋大賞ノンフィクション本大賞2019」をはじめ、11の文学賞を受賞しました。

 

 

アイルランド人(ホワイト)の夫と日本人(イエロー)の著者の息子が、イギリスの中学校に進学する過程で多様なルーツの同級生と出会い、時に衝突します。多様ゆえに何気ない言動が人を傷つけてしまうことへの戸惑いと気づきを息子の成長とともに見つめ、考ることができる物語です。全16章のエピソードからなり、1章毎はそれほど長くなく読みやすいと思います。

 

 

その中でも特にKのの印象に残った2か所をご紹介します。

 

「どこか休暇(ホリデイ)に出かけるんですか?」

夏休み前に、アフリカ系転入生の母親に著者がかけた言葉です。

 

休暇の予定を尋ね合うことは夏の決まった挨拶のようなもので、そこに相手を傷つける意図など微塵もなかったにもかかわらず、著者は相手の怒りを買ってしまいます。

 

 

「多様性は難しい」そう感じたエピソードです。

 

いつどんな場面で、自分とは異なる立場の人の気分を害してしまうか分からない。それが多様性を生きるということなんですね。

 

そんなの煩わしいと感じるかもしれませんが、そこで投げ出さず考えることが、多様性を理解するためには必要なのです。

 

~間接的に彼からバカにされていたらしいわたしですら一抹のサッドさを感じてしまうのは、彼が使っている言葉が、痛々しいほど古めかしいからだ。

息子の同級生でハンガリー移民の親を持つダニエルは、黒人系の女の子をジャングルと結び付けてばかにしたり、日本人の母を持つ息子を目の吊り上がった東洋人の子と呼んでいたりしました。

 

明らかに「人種差別だ」と批判されるはずの彼の言動について、著者はそれらの言い回しの数々が古めかしいことに気が付きます。

 

 

悲しいことに、おそらくダニエルの父の発言が、その原因なんですよね。自らもハンガリーから移動してイギリスに来たはずなのに、同じように移動してきた黒人系、東洋系の人を下に見る発言はなんでなのでしょう。

 

ダニエルは当然自分の父の影響を受けているわけですが、著者の息子や他の同級生と交流することで、せめて子供の世代からでも接し方が良い方向に変わってくれることを願います。

 

 

 

 聖なるズー (濱野 ちひろ/集英社学芸単行本)

LGBTQという言葉を全く聞いたことがない、という人は昨今だいぶ少なくなっているのではないでしょうか。

 

「聖なるズー」はそこからさらに進んで、動物と人間の性愛をテーマにした本です。

 

著者は、ドイツで犬や馬をパートナーとして愛する「ズー」たちへのインタビュー、ズーコニュニティーへの参加を通して彼らが重んじる「パートナーである動物との対等性」に着目し、開高健ノンフィクション賞を受賞しています。

 

 

初めはそのテーマにとても驚きましたし、若干引いてしまったことも事実です。

 

しかし、読み進める中で「対等」とはどういうことなのか、そもそも人間同士でさえそんなことは不可能なのではないかという著者の疑問に少しずつ共感できるようになります。

 

自分にとって異質なものへの驚きから少しの共感、というこの流れこそが多様性に近づいていく過程の一つと言えるのではないでしょうか。

 

 

そんな貴重な読書体験ができること間違いなしの1冊です。

 

 

まとめ

「ぼくイエ」はルーツの多様性、「聖なるズー」は性の多様性を実感する書籍でした。

 

自分が持っている「常識」とは異なる常識を持っている人たちを知るとき、最初はやはり違和感を感じます。

 

それでも今まで知らなかった、こういう人たちもいるんだという気づきが、多様性を尊重することの最初の一歩となってほしいと思っています。

 

 

※愛用しているオススメのしおり

knonononai.hatenablog.com

 

 

※さらに多様性を考えたい方へ。

knonononai.hatenablog.com